日本における不登校の児童生徒は19万人以上と言われています。不登校生は決して珍しい存在ではなく、私たちにとって身近な存在であり、かつ我が子が不登校になっても驚くべきことではないのです。
不登校の子どもたちは自分の置かれた状況に対する辛さだけでなく、学習の遅れや進路についても悩んでいます。また、不登校のため学習の機会を得られず、進路の選択肢が狭まってしまったという人も少なくありません。
2017年2月に完全施行された教育機会確保法によって、不登校の子どもに対する対応が見直されました。本記事では、教育機会確保法について分かりやすく解説していきます。
本記事が、学校に行けずに悩んでいる方や、学校に行けないお子さんをお抱えの親御さんの参考になりますと幸いです。
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教育機会確保法とは
何らかの事情を抱えて学校に行けない子どもの数は年々増えています。いじめや人間関係、あるいは家庭の事情などで学校に行けない児童生徒はクラスに1人の割合でいるといわれています。
就学年齢にある子どもが登校を拒否した場合、学習に遅れをとったり、将来の選択肢を狭めてしまったりという問題が起こるケースが多いです。また、大人になってから、自身の学力や教養レベルが周囲と比較して低いことにコンプレックスを抱くかもしれません。
こうした問題がある中、2017年2月に教育機会確保法が完全施行されました。教育機会確保法とは不登校の児童生徒が教育の機会を損なわないことを目的にした法律です。
それぞれの子どもに合った学びや学校に代わる教育機会の提供についての議論が、教育機会確保法によってこれまで以上に盛んに行われるようになりました。
教育機会確保法の理念
教育機会確保法には5つの理念があります。以下では、教育機会確保法における各理念について詳しく説明していきます。
全児童生徒が豊かな学校生活を送れるよう学校は環境を確保する
全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、勉強に専念できるよう学校には環境の確保が求められています。
・いじめ、仲間外れ、悪口を許さない雰囲気づくり
・各児童生徒に応じた学習の指導、及びサポート
・教室に行けない児童生徒に対して学外で居場所を提供する
不登校の児童生徒にそれぞれ必要な支援を提供する
学校ないし、担当教員は不登校の児童生徒の学習の進捗状況や実情を把握し、本人に合ったサポートを行います。
・児童生徒の意思を尊重した上での休学の許可
・保護者や本人に対しての必要な情報提供、及び助言
・ICTを活用した支援
・家庭訪問
・不登校特例校の設置
不登校児童生徒が安心して教育を受けられるよう学校における環境整備
学校や担当教員には不登校の児童生徒の状況を常に把握し、状況に応じた支援を行うことが求められています。
・別室登校、保健室登校の許可
・不登校の児童生徒について現状把握、及び適宜サポート
・専門員(精神科医やカウンセラー)との連携
普通教育を十分に受けていない者の意思を尊重して教育機会を確保する
義務教育段階の教育を受けていない者に対しては、年齢や国籍に関係なく、学びの機会を確保することが求められています。また、教育水準の維持、及び向上も課題となっています。
・夜間などに授業を行う学校の設置促進
・夜間などに授業を行う学校での多様な生徒の受け入れ
国、地方公共団体、教育機会確保の活動などに従事する民間団体と連携する
不登校の児童生徒について学校や担当教員のみで解決に動くのではなく、自治体や民間の団体と協力することも重要であると考えられています。
・学校、教育委員会、及び教育機会を提供する民間団体との連携
・不登校児童生徒に対する支援を学校や自治体、民間の団体が協力し、補完し合いながら行う
教育機会確保法のポイント「学校だけが学びの場ではない」
本人は不登校であることについて自身を責める必要はありません。しかし、不登校の児童生徒の割合は通学している児童生徒よりも少ないため、社会におけるマイノリティであることも事実です。
そのため、自分を責めてしまう子どもや、我が子の状況を嘆く親御さんも少なくありません。
保護者や教員の中には児童生徒の状況を見て「欠席を認めた方がよい」と本心では分かっていても、周囲の視線や子どもの将来を思って登校を無理強いする人もいます。
もちろん、こうした無理強いも子どもを思っての行為であるため、責めるべきことではありません。しかし、無理強いは子どもの心を傷つけたり、状況を悪化させたりする原因になることもあります。
教育機会確保法では就学年齢にある者や義務教育段階にある者に対して平等に教育を与えることを目標としているだけでなく、「学校に行かなければならない」という固定観念を軽減することも目的にしています。
教育機会確保法では児童生徒全ての教室への通学を目指しているのではなく、それぞれの状況に合わせた対策が認められています。本人の状況や意思によっては、休養することや、本人が安心できる場所で学ぶことも認められます。
また、学校に行くこと自体が困難な児童生徒については、フリースクールや教育支援センターといった場所で学習の機会を得られます。
学校に通学することや、クラスでみんなと授業を受けることも重要です。しかし、それがなんらかの事情により難しい子どもたちがいることも忘れてはいけません。教育機会確保法によって、児童生徒が自分に合った場所やペースで学びやすくなりました。
教育機会確保法に関わる課題
教育機会確保法は2017年に執行された新しい法律です。そのため、不登校の児童生徒に対する対応について議論が行われている部分も多く、解決が求められている課題も少なくありません。
以下、教育機会確保法に関わる課題について説明していきます。
・教員の負担の重さ
教育機会確保法では家庭訪問による指導や、不登校児童生徒への細やかな目配りが求められています。激務の教員が不登校の児童生徒にどこまで対応できるか、あるいは教員自身の負担の重さが問題となっています。
・フリースクールの少なさ
フリースクールは東京や大阪といった大都市圏には多くあります。しかし、各地方におけるフリースクールの数は1~5施設程度と少ないです。地方では子どもたちがフリースクールに毎日通うことはアクセスの都合上難しいケースも少なくありません。
・不登校への理解がない
現代社会では不登校の児童生徒に対する理解があるとは言い切れません。保護者の中には教育機会確保法の内容を知っていても、我が子を思って学校に通わせたいと考える人もいます。また、我が子が学校に通えないことについて複雑な心境の親御さんは少なくありません。
まとめ
日本では義務教育期間が定められていることから、小学生や中学生にあたる年齢にある者に対して「学校に通うことは当たり前」「クラスで授業を受けることは当然のことだ」という見方があります。
もちろん、就学年齢にある者には学ぶ義務があるため、学校に通う必要があります。しかし、児童生徒の全てが通学することは現実問題として難しいといえるでしょう。
学校にはいじめを受けている子、人間関係に悩んでいる子、勉強が苦手な子、家庭の複雑な事情によりストレスを抱えている子など様々な子どもたちがいます。
こうした事情を鑑みて、学校や教師、あるいは教育機関には、児童生徒が過ごしやすい学校づくりや、それぞれに合った教育の場を提供することが求められています。
教育機会確保法では豊かな学校生活を送れるような配慮、不登校児の状況に合ったサポート、学校に代わる学習機会の提供などについて唱えられています。
教育機会確保法によって、不登校の児童生徒の対応について行政や教育関係の組織による話し合いも活発に行われるようになりました。