保護者がすべき「事実の認識」とは?
不登校の子どもの保護者に対するカウンセリングで、目指すことのひとつは「事実を認識してもらうこと」。
事実がわからないと不安も焦りも消えません。
「このまま学校に行かなければ、子どもの将来が潰れてしまう。フリーターになることは避けて欲しい」という保護者がいたとします。
では、事実として、お母さんの言う通りに大学に入り新卒で就職したとしましょう。
けれど、大学に入ったから、就職したから幸せだとは言えません。
それはお母さんもお父さんも一番わかっているはずです。
就職をして安心かといえば、転職率は高いしすぐやめている人のほうが多く、頑張って仕事を続けたからといってお給料が順調に上がる時代ではありません。
むしろ就職してからの挫折で苦しむ人が増えているのが現状です。
逆にフリーターになったら何が困るのでしょうか。
フリーターとして自由にお金を稼ぎ、それを資金に起業した人はたくさんいます。
アルバイトで生計を立てながらも芸術の道を邁進する若者は幸せではないのでしょうか。
自分が想定したルート以外にも幸せはある
「子どもには夢を持って欲しい」
「自分の夢に向かって頑張って欲しい」
そういう大人は非常に多いです。
しかし、夢を叶えるために学校に行くことや、学歴は絶対に必要でしょうか。
既存のルートを辿って大人になったお父さん、お母さん自身は中学生の頃に思い描いていた夢を叶えられたのでしょうか。
冷静に考えれば事実をわかっているのに、どうしても自分が決めたルートからはずれられない人が多いのです。
自分が想定したルート以外にも幸せはある、ということが事実です。
また、自分が決めたルートにあてはめすぎようとして幸せな気持ちを失っていく子ども達が多いのも事実です。
悩むと視野が極端に狭くなる
悩みが深いほど、あるいは、あまりにも想定外の悩みに直面すると視野が極端に狭くなることが多いです。
カウンセリングで事実を認識してもらうこと=視野を少しずつ広げること、とも言えます。
前方の狭い道しか見えなくなっているときには何を考えても悲観的になりがち。
少しずつ周りの風景も見えるようになれば、そこまで悲観することではないと認識できるようになります。
事実として、「学校を休むこと」は決して悲観的な将来と直結することではないのですから。
学校に行かなくても勉強はできる
次に、学校に行かなければ勉強できないという思い込みに対して、事実をお伝えします。
勉強する方法はいくらでもあります。
「でも、お金がかかるんでしょう?」
もちろん、お金をかけようと思えばいくらでもかけられます。
ですが、低予算で勉強できる場所はいくらでもあります。
各自治体に問い合わせれば、ボランティアが運営する学習サークルを紹介してもらえることもあります。
「どうしよう」と思ったら事実を確認する
「どうしよう」と思ったら、まず事実を確認する習慣をつけてみてください。
「思い込み」や「先入観」「昔の話」ではなく「事実」を知ってください。
「何があっても私の息子、娘が幸せになれる道はある」という事実がハッキリとわかるはずです。
それこそが、煮詰まっている現在の状況を打破する突破口になるのです。
ちなみに、決して悲観的ではない事実を知って「そうか、焦ることはない、まだまだ大丈夫だ」と思えたとたんに、子どもが学校へ行き始めるという現象は少なくありません。
(この記事は、REO代表の阿部の著作『不登校は天才の卵』の内容を改変して作成しています。書籍の詳細はこちら)