近年、不登校の児童や生徒は増加傾向にあり、2021年における不登校の子どもの数は過去最多である19万人以上といわれています。不登校になる理由は、無気力、生活リズムの乱れ、人間関係のもつれ、いじめ、家庭内の問題など様々です。
現在の日本で深刻な社会問題の一つである不登校ですが、不登校の定義をきちんと理解している人は少ないことも事実です。本記事では、不登校の定義について解説した上で、この定義に該当する子どもたちが受けられる支援についてタイプ別に紹介していきます。
学校以外の学習できる場所や、悩みを抱える子どもをサポートする機関は多くあるため、不登校であることは社会から切り離されることではないことを覚えておいて下さい。
本記事が、学校に行けずに悩んでいる方や、学校に行けないお子さんをお抱えの親御さんの参考になりますと幸いです。
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不登校の定義とは
お子さんが何日も学校に行っていなかったら「うちの子は不登校なの?」と不安になる親御さんはとても多いです。また、「不登校という言葉は聞くけど、定義はあるの?」という素朴な疑問をもっている方も少なくないでしょう。以下、不登校の定義について解説していきます。
文部科学省による不登校の定義
文部科学省は不登校について、次のように定義しています。
「不登校児童生徒」とは「何らかの 心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、 登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間 30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を 除いたもの」と定義しています。
参考:文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/futoukou/03070701/002.pdf
上記の定義では、病気や経済的事情を除いて、年間30日以上欠席した場合に不登校と見なされると説明されています。30日以上の欠席について、連続する欠席であるかは問われていません。
そのため、一年間にわたり毎月3日程度休んでいる場合も不登校と見なされることになります。何らかの事情を抱えているため教室に行けない場合でも、保健室や別室に登校していれば「登校」しているため不登校には該当しません。
また、遅刻や早退が多く、授業をほとんど受けていない場合でも、年間の欠席数が30日以下であれば不登校の定義から外れます。
「不登校相当」と「準不登校」
不登校と一口で言っても、様々な状態の不登校があります。「欠席数が30日以内であれば、不登校ではない」と片付けられる問題ではないことも事実です。
文部科学省が管轄する国立教育政策研究所は「不登校相当」と「準不登校」を設けています。不登校相当、準不登校を判断するにあたって用いる計算式は以下になります。
欠席日数+保健室等登校日数+(遅刻または早退した日数÷2)
不登校相当は上記の計算式で算出された欠席日数が30日以上の場合に該当します。準不登校に関しては、同計算式において15日以上30日未満が算出された場合に該当します。
「登校拒否」と「不登校」の違い
不登校について「登校拒否」と同義語として解釈されている方も少なからずいます。また、不登校の子供の親や保護者の中には、不登校よりも登校拒否という言葉に馴染みのある方も多いはずです。
それというのも、1960年頃は「学校嫌い」という名目で調査が行われており「登校拒否」という言葉が一般的でした。「不登校」という言葉が使われるようになったのは1998年であり比較的最近のことです。現代では「登校拒否」と「不登校」では大きく意味が異なります。
・不登校
学校に行きたいけれど、学校に行けない状態
例:学校に行って勉強したいけれど、学校に行こうとすると頭がなぜか痛くなり結局行けない
・登校拒否
学校に意思をもって行かない場合
例:「将来の目標に向かって学校に行かず独力で頑張ろう」と本人が決めている
上記の通り、「不登校」か「登校拒否」かは、学校を本人の意思によって欠席するかどうかが深く関係しています。
不登校のタイプと適切な対応
不登校と一口に言っても、学校に行かない、行けない理由は様々です。ここでは、文部科学省の調査によって分類されたタイプ別に、適切な対応の一例を紹介していきます。
学校生活上の影響タイプ
クラスメートとの関係、授業、いじめ、課外活動、教師との関係など、学校生活における何かから影響を受けて不登校になったタイプです。
このタイプの不登校は、「勉強を誰かに教わりたい」「学校には行きたくないけど、同世代と繋がりたい」と心の底で思っている子どももいます。本人の勇気と決断するまでの時間も必要になりますが、フリースクールや、転校が社会復帰に繋がることも期待できます。
あそび・非行タイプ
遊びに夢中であったり、なんらかのストレスを抱えていたりして学校外の方向に走ってしまったタイプです。このタイプの子どもは、不安、孤独、寂しさなどを抱えている傾向にあり、学校に行かずラクをしたいと考えているわけではありません。
心のケアが必要なケースも多いため、児童相談所や、カウンセラーとの連携も検討してみるとよいでしょう。精神的な傷を癒してあげることで、登校する可能性も十分あります。
無気力タイプ
学校、家庭、生活リズムなどによって無気力になり、学校に行けないタイプです。「友人はいるし、いじめにもあっていないけれど、学校に行く気がしない」という悩みを抱える子どもたちも多いです。本人も含めて、親や教師、さらにはクラスメートも不登校になった原因が分からないケースも少なくありません。
周囲の大人は厳しい言葉をかけず、あたたかく見守ってあげることが大切です。友人や担任の先生との関係を良好に保てば、学校に行けるようになる可能性は高いです。通信制、フリースクールなどもおすすめです。
不安など情緒的混乱タイプ
このタイプの子どもは病気ではないものの、登校しようとすると頭痛、腹痛などの体調不良により学校に行くことができません。学校で問題を抱えているケースもありますが、母親と離れることに不安を感じていたり、家庭内の不和が影響していたりすることもあります。
周囲の大人は子どもの心が安定するまで待ってあげるとよいです。子どもの不安感が強い場合はカウンセリングを受けることをおすすめします。
意図的な拒否タイプ
このタイプの子どもは、子どもながらにして自身の将来や適性をよく理解しています。「学校外でやりたい活動がある」「自習した方が効率がよい」「タレントになりたいから、その準備をしたい」といった信念をもっています。
義務教育ではない高校であれば、高卒認定を取り大学に進学する選択もよいでしょう。子どもが義務教育期間にある場合は本人の考えに理解を示しつつ、親や教師が学校に行くことの意義や、目的を教え説く必要があります。本人なりの考えがあるため、無理強いをしないように注意して下さい。
複合タイプ
近年では、複合タイプの不登校が最も多いといわれています。このタイプはいじめと家庭内の貧困といったように、複数の問題を抱えているケースが多いです。「子どもが学校でいじめにあっているけれど、母子家庭で母親は朝から深夜まで仕事で家にいない」などといったケースも該当します。
学校、専門機関、カウンセラーなどが連携して、サポートしていくことが大切です。子どもを否定することはせず、あたたかく見守りながらも、適切な助言を与えることが求められます。
まとめ
近年、様々な事情によって学校に行けない子どもが増えてきています。子どもが学校に行かないことは本人にのみ問題があるわけではなく、子どもを取り囲む状況も大きく関係しています。
文部科学省は年間の欠席数が30日以上の子どもを不登校と定義していますが、この定義にあてはまる子どもの数だけ、状況や問題の数はあるといえるでしょう。
不登校の子どもを抱える保護者の中には、不安や孤独感を抱かれる方も多いです。しかし、学校や専門機関などから適切な支援を受けることによって、子どもが学校に行けるようになったり、立派な社会人となったりする例は非常に多いです。
お子さんの意思を尊重しつつ、長い目で見守ってあげることが大切です。