本人が「戻りたいかもしれない場所」を否定しすぎない
不登校の子どもを持つ保護者や不登校支援の活動をする人の中には必要以上に学校を否定する人がいます。
「学校の勉強なんか何の役にも立たないから行く必要がない」
「教師なんて信用できない。先生の言うことなんて聞かなくていい」
この意見には反対です。学校の勉強が役に立たないということはありません。
もちろん、子どもによってはカリキュラムや授業の形態が合わないことはあります。
しかし、学ぶ形を変えることで勉強が好きになる子もいますし、そもそも「学校には行けないけれど勉強はしたい」という子もいます。
「中学校へは行けないけれど高校へは進学したい」という子も増えています。
それに、いまの学校への復学の可能性がある限りは、その場所を否定しすぎてはいけません。
本人が「戻りたい場所」かもしれないのですから。
勉強というと、どうしても、高校へ行くため、大学へ行くためと「進学の手段」でとらえてしまいがちですが、そうした点を抜きにして勉強に取り組む子もいます。
興味や関心を持ち追求することは立派な勉強です。
そうしたことをつい抜きにして、「勉強なんかしなくていい、高校や大学へ行けなくても立派な人はいる」と言ってしまうことは、「勉強」という意味の捉え方を狭くしてしまい、本来の勉強が持つ意味や価値を知る機会を奪うことにもなります。
先生を全否定することも避けよう
先生の悪口もできるだけ控えましょう。
先生は子どもにとって、親以外に接する機会がある数少ない大人です。
まだ自分の世界を広く持っていない子どもは親や先生といった大人によって様々なことを学んでいきます。
ある特定の先生の言動について、子どもの味方をするために悪く言うくらいはいいと思いますが、「学校の先生なんて、ろくな人間がいない」などとすべてを否定することは避けてください。
良い先生、信頼できる先生は必ずいます。特定の先生への感情が、大人全般への信頼を失うことがないようにしてあげましょう。
大人のことを信用できないと、味方になろうとする大人のことも見つけにくくなります。
いくらインターネットからの情報が得やすい時代とはいえ、周りの大人から得ることもまだまだ多いのです。
信頼される大人に対して、子どもは必ず心を開きますし、それは子ども本人のためにもなります。
大人全般を信頼できなくなれば、ますます大人と接することを敬遠するようになりかねません。
「学校の先生のことをどうこう言っているけれど、あなたも同じ大人でしょ?」
などと思われないよう、子どもの前で先生の⋯いや、他人の悪口は言わないにこしたことはありません。
悪口の内容よりも、「悪口を言っている人」そのものを冷静に見ている子が多いのです。
学校について話さなければいい
かといって、先生を必要以上にほめたり、学校を賛美する必要もありません。
第一、あなた自身がそんなことを思ってはいませんよね。ではどうしたらいいのか。
学校のことを話さなければいいのです。
そもそも「学校に行かなくていい」と本心から思えるようになると「学校」という単語を日常的に使う機会は減っていきます。
その言葉が出るということは、まだまだ「学校に行くこと」が頭の中を占めているとも言えます。
学校を否定したい気持ちがあっても、それは心で思っていればいいだけで、わざわざ口に出すことではありません。
それを口に出せば出すほど「お母さんは、口ではああ言っているけれど、本当は学校に行って欲しいんだろうなあ」と子どもにその本心を見透かされてしまうことがあります。
たとえば、子どもが寝る前に「明日、学校に行ってみるよ」と言ったとします。
「そうなんだ、しっかりね」と喜んで、励ますのは結構です。
しかし、翌日になって「やっぱり行きたくない、起きたくない」と前言撤回したとします。
そんなときには「そっか」と話を受けて、あとはもう「学校」というワードは口にしないでいてあげてください。
そんなときこそ、「今日はあったかくていい天気だよ」「8時のワイドショーであなたの好きなアイドルが出るよ」など、学校とは関係のない会話をすれば十分です。
「じゃあお母さん、仕事行ってくるけれど居間を掃除しておいて」なんていうお願いもアリです。
帰って来て掃除してくれていたら「ありがとう、うれしい!」とほめてあげればいいし、していなかったら「あー、やってくれてなかったの?」とガッカリすればいいのです。
「学校」が気になって仕方がないときには、まず学校以外のことで喜怒哀楽を表現することから始めてみてください。
学校以外の話題で話すリハビリをしよう
不登校に長い間悩んでいればいるほど、学校以外の話題が思いつかなくなっていることに気がつくかもしれません。
それはあなた自身の視野が狭くなり、語彙が少なくなっている証でもあります。
子どもと一緒に会話のリハビリをしていきましょう。
最初は天気のこと、テレビのことしか話すことがないかもしれません。でも、それでいいのです。
「オレはアニメのほうが好きなんだよ」「私はアイドルオーディションを受けてみたい」と、好きなことを話してくれるようになるかもしれません。
それを否定せずに受け入れているうちに、学校のことが親子ともに気にならなくなる時間帯が少しずつ出てくるでしょう。
忘れた頃になって子どもが自分で「そろそろ学校に行ってみようか」と言いだしたら、気持ちよく送りだせばいいのです。
くれぐれも「アニメ?オーディション?だったら学校へ戻るほうが先よね」などと、「学校」の話題に戻ってしまわないように気をつけてください。
学校の話をする機会は必ず訪れますから焦って口に出さないようにしてください。
(この記事は、REO代表の阿部の著作『不登校は天才の卵』の内容を改変して作成しています。書籍の詳細はこちら)